「明日の朝、本当に運転して大丈夫だろうか?」
飲み会の帰り道、ふと我に返ってこの不安に襲われたことはありませんか? スマホのアラームをセットしながら、「あと何時間寝られるか」を計算する。翌朝、頭が少し重いけれど、検問に引っかかったら……と想像して血の気が引く。
私にもかつて、「6時間寝たから大丈夫だろう」と根拠のない自信を持ってハンドルを握りかけ、後になってヒヤリとした経験があります。もしあの時、事故を起こしていたら。もし検問があったら。私の人生はそこで終わっていたはずです。
あなたには、そんな恐怖を味わってほしくない。 だからこそ、気休めは言いません。この記事では、あなたの体重と飲んだ量に基づいた「現実的な分解時間」と、巷に溢れる「早く抜く方法」の真実を、包み隠さずお伝えします。
魔法のような解決策はありませんが、「正確な予測」は可能です。自分の身を守るための計算を、今ここで確認していきましょう。
ビール1本は何時間で抜ける?運転はいつから可能?
一番知りたいのはここですよね。「結局、どれくらい待てばいいのか」。 まずは一般的な目安(基準)を知ることから始めましょう。ここを読み違えると、全ての計算が狂ってしまいます。
【早見表】男性4時間・女性5時間が「1単位」の目安
医学的に、純アルコール20gを「1単位」と呼びます。 これを肝臓が分解しきるのにかかる時間は、一般的に男性で約4時間、女性で約5時間と言われています。
「えっ、そんなにかかるの?」と思いませんでしたか? そうなんです。たった1杯でも、体から消えるには半日近くかかるのです。
以下に、よくあるお酒の「1単位(分解に4〜5時間)」の量をまとめました。これを超えていれば、時間は倍々に増えていきます。
■アルコール1単位(分解目安:男性4h / 女性5h)の量
| 酒の種類 | アルコール度数 | 量の目安 | 備考 |
| ビール | 5% | 500ml | ロング缶1本 |
| チューハイ | 7% | 350ml | レギュラー缶1本 |
| ハイボール | 7% | 350ml | レギュラー缶1本 |
| 日本酒 | 15% | 180ml | 1合 |
| ワイン | 12% | 200ml | グラス2杯 |
| ウイスキー | 43% | 60ml | ダブル1杯 |
(出典:アルコール健康医学協会 – お酒と健康 飲酒の基礎知識)
注意してほしいのは、女性は男性に比べて体が小さく、肝臓のサイズも小さいうえ、体内の水分量が少ないため、アルコール血中濃度が高くなりやすいという点です。 「夫と同じ量を飲んで、夫が大丈夫だから私も大丈夫」という判断は、絶対に避けてください。
「寝たら抜ける」は間違い?睡眠中は分解が遅くなる
ここで多くの人が陥る、致命的な勘違いがあります。 「寝ればお酒は抜ける」と思っていませんか?
実はこれ、逆なのです。 睡眠中、私たちの体の機能は休息モードに入ります。当然、肝臓の働きもスローダウンします。研究によると、睡眠中のアルコール分解速度は、起きている時の約70〜80%程度まで落ちることが分かっています。
例えば、「深夜2時まで飲んで、朝8時まで6時間寝たからスッキリ!」と思ったとしても、肝臓はその間、サボり気味で働いていたわけです。 計算上は抜けているはずの時間でも、実際にはまだ体内にアルコールが残っていて、朝の通勤中に「酒気帯び運転」で検挙される……。これが、悲劇の典型的なパターンです。
計算結果には、必ず数時間の余裕(バッファ)を持たせてください。「ギリギリ攻める」のは、あなたの人生を賭けるにはリスクが高すぎます。
私の体重・飲んだ量だと、正確には何時間?
「平均値はわかった。でも、私は体重があるからもっと早いはずだ」 あるいは、「私は痩せているから心配だ」。 そう思うのは当然です。アルコールの分解能力は、体重(肝臓の大きさ)に大きく依存するからです。
法医学でも使う「ウィドマーク式」で限界値を出す
より正確に、自分の「限界」を知るために、体重を使った計算式を使ってみましょう。 簡易的な計算式として、「体重1kgあたり、1時間に0.1gのアルコールを分解できる」というものがあります。
数式にするとこうです。 飲んだ純アルコール量(g) ÷ (体重kg × 0.1) = 分解にかかる時間
例えば、体重60kgの人がビール500ml(アルコール20g)を飲んだ場合。 20 ÷ (60 × 0.1) = 3.3時間

これが理論上の「最短時間」です。 ただし、これはあくまで「肝臓がフル稼働した場合」の数値。先ほどお伝えした通り、睡眠や体調、遺伝的な体質(お酒に強い・弱い)によって、ここから時間はもっと延びます。 この計算結果を「最低ライン」として認識し、そこからプラスアルファの時間を足して判断してください。
(参考:厚生労働省 e-ヘルスネット – アルコールの吸収と分解)
ストロング系(9%)はテキーラ級?「隠れ深酒」の罠
コンビニで手軽に買える「ストロング系チューハイ(9%)」。 もしあなたがこれを日常的に飲んでいるなら、警告させてください。これは「お酒の形をした劇薬」かもしれません。
500mlのロング缶1本に含まれる純アルコール量は、なんと約36g。 これを先ほどの「1単位(20g)」で考えると、たった1本で約1.8単位。テキーラのショットに換算すると約3〜4杯分にも相当します。
体重60kgの人が1本飲んだだけで、分解には理論値でも6時間以上かかります。 2本飲んだら? 半日(12時間)は体から抜けません。
夜の9時に飲み始めて、2本空けて日付が変わる頃に寝る。 翌朝7時、あなたの呼気からは基準値を大幅に超えるアルコールが検出されるでしょう。 「安くて早く酔える」代償は、翌日の午前中を全て棒に振ることで支払うことになるのです。
サウナや水飲みで、お酒は「早く抜く」ことができる?
「ヤバい、飲みすぎた。明日までに何とかして抜きたい!」 そんな焦りから、「二日酔い 治し方」「お酒 早く抜く」と検索していませんか? ネット上には様々な「裏技」が転がっていますが、私からはっきりとした真実をお伝えします。
劇的な短縮魔法はない。「水」と「時間」が全て
残念ながら、アルコールの分解時間を劇的に短縮する魔法の方法は存在しません。
- サウナで汗をかく: 脱水症状を加速させるだけで、血中のアルコール濃度は下がりません。むしろ危険です。
- 運動する: 代謝は多少上がりますが、肝臓の処理能力を超えることはありません。
- 深呼吸: 呼気から排出されるアルコールはごくわずかです。
唯一できることは、「水を大量に飲むこと」。 これは分解を速めるというよりは、脱水を防いで尿からの排出を促し、二日酔いの症状(頭痛や吐き気)を軽減するための守りの策です。 「迎え酒」なんてもってのほか。肝臓に追い打ちをかける自殺行為だと心得てください。
ウコンの飲み過ぎは逆効果?知られざる肝障害リスク
「飲む前にウコン」を合言葉に、サプリメントやドリンク剤を愛用している方も多いでしょう。 確かに、適量であれば胆汁の分泌を助ける効果が期待できます。しかし、「体に良いものだから、いくら飲んでもいい」は大間違いです。
実は近年、ウコン製品の過剰摂取による「薬物性肝障害(DILI)」の報告が増えています。 特に、脂肪肝や肝炎の疑いがあるなど、肝機能が弱っている人が高濃度のウコン(クルクミン)を摂取すると、肝臓にトドメを刺すことになりかねません。死亡例すら報告されています。
肝臓をいたわるつもりで飲んだサプリが、逆に肝臓を痛めつける。 そんな皮肉な結果にならないよう、「ウコンさえ飲めば無敵」という過信は捨ててください。
(参考:日本医師会 – 「健康食品」による健康被害の未然防止と拡大防止に向けて)
翌日のパフォーマンスを守る「賢い付き合い方」
ここまで厳しい話をしてきましたが、私自身、お酒が嫌いなわけではありません。 ただ、現代は「タイパ(タイムパフォーマンス)」の時代。 二日酔いで休日の半日を潰したり、仕事のパフォーマンスが落ちて残業が増えたりすることは、あまりにもコストが高すぎます。
あえて飲まない「ソバーキュリアス」という生き方
最近、Z世代を中心に「ソバーキュリアス(Sober Curious)」というスタイルが流行しているのをご存じですか? これは「お酒を飲めるけれど、あえて飲まない」「あえて少量しか飲まない」という選択です。
「付き合いが悪いと思われないか?」 そう不安になる気持ちもわかります。でも、実際に試してみると、翌朝の目覚めの良さ、午前中の仕事の捗り具合に驚くはずです。 最近はノンアルコール飲料のレベルも格段に上がっています。
「明日のために、今日は飲まないでおこう」 そう言えることは、決してノリが悪いことではなく、自分の人生と時間を大切にする「大人の余裕」なのです。
まとめ:リスク計算を味方につけ、安全な朝を迎えよう
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。 お酒の分解について、改めて重要なポイントを整理しましょう。
- 分解時間は長い: ビール1本で男性4時間、女性5時間が目安。
- 睡眠はあてにならない: 寝ている間、肝臓の働きは落ちる。
- 計算には余裕を: 「体重×0.1」の計算結果に、必ずバッファを持たせる。
- 魔法はない: サウナやサプリで時間は短縮できない。水と時間が解決するのを待つのみ。
もし、翌朝の運転に少しでも不安があるなら、**「乗らない」**という選択が唯一の正解です。 「たぶん大丈夫」で失うものが、あなたの人生には大きすぎます。
正しい知識と計算で、あなた自身と、あなたの大切な人の未来を守ってください。 それが、私からの心からの願いです。

よくある質問(FAQ)
Q. 寝る前に水を大量に飲めば、翌朝にはお酒が抜けていますか? A. 水を飲んでもアルコールの分解速度自体は速くなりません。ただし、脱水を防ぐことで二日酔いの症状(頭痛など)を緩和する効果はあります。
Q. アルコールチェッカーで「0.00mg」なら絶対に運転しても大丈夫ですか? A. 法的には基準値以下ですが、アルコールによる脳の機能低下(判断力や注意力の欠如)が残っている可能性があります(二日酔い運転)。体調が万全でない場合は運転を控えるべきです。
Q. サウナで汗を流せば、早くアルコールが抜けると聞きました。 A. それは間違いです。汗から排出されるアルコールはごくわずか(数%以下)です。むしろ脱水を助長し、血中のアルコール濃度を高める危険性があるため控えてください。
免責事項 本記事で紹介した計算式や時間はあくまで目安であり、個人の体質、体調、摂取した食事の内容などにより大きく異なります。計算結果に基づき「運転可能」と判断した場合でも、実際の血中アルコール濃度が基準値を下回っていることを保証するものではありません。飲酒後の運転は絶対に行わないでください。


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